日本財団 図書館


 

のどれもが、初めから人を傷つけるつもりではなく、いっしょに楽しんでいる時に突然起こりました。相手にとっても予測できない彼の行動にびっくりして、泣いたり先生に報告したりで、後から大変な事をしてしまったと気づくのですが、しばらくすると、また同じことを繰り返してしまうのでした。このことをどう理解していいのかわからず、彼に聞いても、自分でも説明できないまま、やってしまった結果に対して、悪いことをしたと言うばかりでした。
ある日、家で子ども達とワイワイ冗談を言いながらケーキを食べていた時、私はふとテレビに気をとられて、そちらに神経が向いた瞬間、彼はそばにあったケーキの箱を持って、その角で思い切り私の足をたたいたのです。まるで「おい、こっちを向け」と言うように。その痛みで一瞬何が起こったのかわからなかったのですが、ああ、こういうことが学校で起こってるんだとその時初めて理解しました。それが危険な物である程、相手が自分の方を向いてくれる。そういう図式が彼の無意識の中に出来上がっていたのです。
こういう方法でしか人と関係を作れない彼が、私は哀れでなりませんでした。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION